エジプトの考古学者、ザヒ・ハワス博士がクレオパトラの墓の発見のための新証拠とされている石版、マグナストーンの解読を進めています。
ザヒ・ハワス博士は過去に一度役職を辞任していますが、その理由や博士の現在の活動について、そしてマグナストーンについても調べてまとめてみました。
2018年1月3日(水)の『林修の歴史ミステリー』では、ザヒ・ハワス博士主導のもと、この石版やクレオパトラの墓の探索について放送されました。
ザヒ・ハワス博士の経歴と辞任の理由
主な経歴
ザヒ・ハワス博士は、1947年生まれのエジプトの考古学者です。
現在、70歳。
結構高齢ですね。
ハワス博士はもともと弁護士になることを夢見ていたそうですが、エジプトのアレキサンドリア大学では古代ギリシャ・ローマ文明の考古学を専攻し、1967年に学士号を取得します。
その後、1979年にはカイロ大学でエジプト学を専攻し、その後、ギザの大ピラミッドで働いた後、アメリカのペンシルベニア大学で1987年、エジプト学の博士号を取得しています。
そして翌年の1988年からはエジプトやアメリカの大学で教えていました。
ザヒ・ハワス博士はエジプト学の権威で、世界で有名な考古学者です。
弁護士になることを夢見ていながら、大学で考古学を専攻することになったのは不思議な縁ですね。
ですが、今では天才考古学者として世界中で知られているザヒ・ハワス博士ですから、考古学を専攻するという流れは運命的というか、必然的なことだったと言えますね。
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これまでの博士の仕事の幅は非常に広く、考古学関連の講師や評論家・カウンセラー、遺跡の保護や保存活動、発掘調査、そしてエジプト考古最高評議会事務総長などをしていました。
この「エジプト考古最高評議会」とは何かと言うと、エジプトには文化省というものがあり、そこに古代遺跡の発掘や発掘物の保護など、考古学を専門に扱う部門がありました。
ザヒ・ハワス博士は2002年からこの部門での事務長を務めていましたが、このエジプト考古最高評議会は2011年に考古省に変わります。
考古学を専門に扱う部門が政府にあるとは、さすがエジプトですね。
遺跡や考古学と言うと夢とロマンを感じますが、実際の発掘作業や発掘物の保存などは、大変な手間や作業、資金、そして優秀な人材が必要ですからね。
考古省が出来た2011年というのは、エジプト革命の最中でした。
その最中に新設された考古省で考古相としての役職に就いたハワス博士ですが、同年3月に辞任をします。
考古相に就任してからわずか1ヶ月ちょっとのことでした。
エジプト考古最高評議会の事務総長時代も合わせると、約10年間も勤めていたものの、その役職を辞任した理由とは何だったのでしょうか?
辞任の理由
ザヒ・ハワス博士は、古代遺跡の保存や発掘物の保護に長年の間、非常に心中を注いで来られました。
そのハワス博士が重要な国のポストである考古相を辞任した理由には、エジプト政府内の派閥や汚職による被害、そして国内の治安の悪さに乗じた遺跡荒らしが関係していたようです。
エジプト革命の最中、国内の混乱に乗じて遺跡泥棒が古代遺跡を荒らすようになってしまい、次々と遺跡が破壊され、また、貴重な遺物が盗まれるようになってしまったそうです。
それを当時の政府の力では防止することも出来ず、ハワス博士がどんなに策を講じて対処しようとしても、一人の力ではどうにもならなかったそうです。
また、ハワス博士によると、政府内で汚職に手を染めていた役人たちが複数おり、その役人たちによってハワス博士は虚偽の告発をされたこともあったそうです。
ハワス博士に対する虚偽の告発とは、ハワス博士が遺物を盗んで私物化している、という内容のものなどでした。
ハワス博士は長年の間、エジプトの古代遺跡の遺物の保護や海外に持ち出された遺物の返還運動などに積極的に取り組んでいました。
返還要求をした遺物の中には、大英博物館にあるロゼッタストーンなども含まれています。
[↓ エジプト政府観光局による、ザヒ博士の紹介動画です]
ですが、そんな博士が遺物を盗んでいるという虚偽の告発をされ、腐敗した役人たちに陥れられたということがに対して、非常に悔しさや怒りを覚えたそうです。
ハウス博士のエジプト古代遺跡や遺物を保護するためのこれまでの精力的で幅広い活動を考えると、とても胸が痛む話です。
遺跡が荒らされ続け、また、政府の役人が腐敗していることに胸を痛め、もうこれ以上自分が出来ることは何もないと、ザヒ・ハワス博士は辞任することにしたそうです。
では、辞任後、そして現在ハワス博士は何をされているのでしょうか?
ザヒ・ハワス博士の現在
ザヒ・ハワス博士は辞任後、大学で教鞭をとったり、記事を執筆したり、その他、考古学者として実地調査を行っています。
特に、エジプトの古代遺跡の魅力について世界でPRをし、多くの観光客を誘致することに成功したそうです。
私も一度エジプトに行ってみたいと長年思っているのですが、いまだ叶っていません。
ハワス博士は考古学の実地調査の一環として、クレオパトラの墓の鍵となると期待されている石版、「マグナストーン」の解読を行っているそうです。
これは、クレオパトラの墓の場所を示す新証拠と見られているようです。
古代文字の解読とは具体的にどのようにするものなのかと長年思っていたのですが、以前、テレビでロゼッタストーンの解読方法が紹介されたのを見たことがあります。
一文字一文字を丁寧に分析し、膨大な分析過程の中で根気良く続けていく姿は、まさに想像を超える努力でした。
ロゼッタストーンは、フランス人のシャンポリオンが解読したものですが、解読までに14年もかかったそうです。
現在、ザヒ・ハワス博士はこのロゼッタストーンよりも更に古い時代に作られた石版である、マグナストーンの解読作業を行っているそうですが、よほどの情熱がないと、普通では続けることなど出来ない大変な作業ですね。
では、ロゼッタストーンよりも古いマグナストーンとは、一体どんなものなのでしょうか?
クレオパトラの墓の新証拠、マグナストーンとは?
マグナストーンは、2016年に発見された、まだまだ発見されて間もない石版です。
エジプトのタップ・オシリス・マグナ遺跡で発見されたそうです。
出典:Wikipedia「タップ・オシリス・マグナ神殿」
ここで発見されたマグナストーンには「ここは我々王家にとって非常に重要な場所」と記されており、他にクレオパトラの墓があることを期待させるような出土品がいくつも見つかっているそうです。
[↓ タップ・オシリス・マグナ神殿の空撮映像です]
クレオパトラの墓の発見のため、ザヒ・ハワス博士は今もマグナストーンの石版の解読を進めながら、実地調査を続けているとのことです。
新しい遺物が発見され、新事実が明るみに出ると、それまでの歴史認識が覆され、とてもワクワクしますね。
昔は当たり前のこととして教科書に載っていた内容でも、今では新たな発見によって違う内容のものに書き換えられている例がいくつもあります。
ザヒ・ハワス博士たちによる、これからの石版解読や発掘調査での成果が楽しみです。
まとめ
エジプトの考古学者、ザヒ・ハワス博士が役職を辞任した理由と現在の活動、そして博士らが発掘を進めているクレオパトラの墓の新証拠とされているマグナストーンについて、調べてまとめてみました。